地元企業が考えるロングライフデザイン 2011.4.5 @ 大須DECO カリモク家具編



カリモクの山碕です。
みなさんカリモク家具ご存じですか?
家具のメーカーって日本国内であまり知られていないんですが、カリモク家具は地元愛知でものづくりをずっとやってきている会社です。
今日はカリモクがどういった経緯でものづくりをしてきたかお話します。

私は去年まで4年間カリモク60ブランドマネージャーとして、商品企画とプロモーションをずっとやってまいりました。
4月からは、販売部門のマネージャーをやっています。

カリモクってどんなメーカーかというと、カリモクっていうのは愛知県刈谷市で、もともと江戸時代から続く材木屋が発祥なんです。
家具を作り始めて、50年60年ですが、もっと前、100年以上まえから、ずっと木にたずさわってきた会社です。
いまもある白半建設(愛知県刈谷市)の末っ子が、創業者の加藤正平。末っ子なもんですから、家業を継げません。
そこで、その材木を使って加工してものを作る、そういった会社として1942年、刈谷木工有限会社を設立します。
そのあとすぐに戦争が来るわけなんですが、木工業としてとにかくなんでも作る。木で銃剣の下請けもやっていました。
終戦後も、とにかく木で作れるものはなんでも作る。それこそ大八車(荷物の輸送に使われていた総木製の人力荷車)から下駄まで、作って売り歩きました。

1947年、終戦後に、刈谷木材工業株式会社になります。
その後成長期にかかってくるんですが、トヨタ自動織機さんの機織りの機械の部品、あとミシン。
昔こんなのありましたね、足で踏むミシン。この天板のところなんかです。
そうしてだんだんむずかしい加工をするようになってきました。

1959年、アメリカに輸出するためにはじめて家具を手がけ、家具作りをはじめます。
その後、河合楽器さん、地元のピアノメーカーさんになりますが、鍵盤の仕事が入ります。中のファンクションもです。
家具の木工はミリの世界ですが、そこでミリからミクロンの世界にいきます。
最初の2年から3年はもうとにかく試行錯誤で手間がかかってもうからない。
こういったステレオキャビネット、レコードプレーヤーの時代に、とにかく、下請けの仕事はなんでもやりますよと。
木のものならなんでも作りますよと。易きにつくな、狭き門より入れの精神です。
ただですね、下請けの仕事ばかりでは、安定しない。仕事があるときとない時がある。
やっぱりそこでものづくりをつづけて思うこと、自社の製品がほしい。
いろいろな可能性がありましたけども、ちょうど日本人の生活が変わる時代でした、畳の生活から、床の生活へ。

1962年国内向けの洋家具を販売します。
これは自分たちのなんだ、と胸をはっていえるものづくりをしたい。
そんな思いで初めてカリモクで作ったのが、Kチェアです。
その後本格的に1964年に『カリモク』というブランドを立ち上げ、全国に販売を開始します。
もともと椅子がメインでしたが、つくってもつくっても間にあわないくらい、いろんなところから声をかけていただき、大きなメーカーになっていきます。

いま全国で、27の営業所、19カ所のショールームがあります。
ブランドも、カリモク、ドマーニ、、7つのブランドで国内生産にこだわって作っています。カリモク60もひとつのブランドです。
と、まあここまでざーっとしゃべりましたが、笑
会社の経緯はここまでです。だいぶ力をつかっちゃいました。




さっき大嶋店長から話があったカリモク60ロングライフデザインですが、長生きしているということは、流行に左右されない。
そういった意味では、やはりシンプルといった点があります。
カリモク60というブランドは2002年に、1960年代から作り続けられている家具を中心にラインナップでまとめて発動したブランドなんですが、
その後に、カリモク60プラス、というのを作っています。
飽きの来ない、現代生活にはいっても違和感なく使える製品、で構成されてたんですが、その当時のものは数が少なかった。
立ち上げ当初は、Kチェア、ロビーチェア、リビングチェア、カフェチェア、それくらいのラインナップでスタートしました。
女性にはかわいい、男性にはかっこいいと受け入れていただいたんですが、ブランドというにはとても小さな規模。
年々認知度が高まってやっていくなかで、限界がやってきます。
インテリアってお部屋の提案ですから、ソファ置いて、テーブル置いて、やっぱり世界観はそれだけでは足りない。
他のものの、生活アイテムってたくさん必要です。そういった中で作ったのがカリモク60プラスです。

でもロングライフデザインで、新しいものをつくる、というのは、どうかな?と思いませんか?
新しいものつくっていいのかな?なんかちがうんじゃないの?って。

-佐々木 メーカーとしてはやめないぞという姿勢の強い現れですよね。

実はやっぱり言われたんです。それはちがうんじゃないの?って。
それは考え方なんです。
たとえばロングライフデザインとレトロといっしょくたにしちゃっていると。
ロングライフデザインというのは、過去から現在へ、未来へ向けての考え方です。
今から未来へ、そういった姿勢でもの作りをすれば、ロングライフデザインになっていきます。
そういった気持ちでプラスブランドをつくっています。それがカリモク60プラスです。
そのコンセプトが、先人のデザイナーのDNAをうけついで現代生活にマッチする機能性、、、よくわからんなあ、って話なんですけど笑
わかりやすくいいますと、たとえばサイドボード。実は廃番になってたんです。これを復刻しました。
非常にデザインが好評で、人気が高かったものです。このまま復刻しています。
ただカリモク60のメインターゲットは20~30代の若い方。
横幅180cmのサイドボードは大きくて現代生活にマッチしない場合がある。でもデザインは大変好評。
そこでマッチするように、できたのがサイドボードショート。幅が150cmです。取手などはサイドボードのデザインをすべて受け継いでいます。
ただ、当時のデザインじゃないからカリモク60ではないよね、そこでカリモク60「プラス」。
実はカリモク60の中に、60プラスをいれて売り続けていくというのは、実績がないものですから、メーカー自身も怖いです。
出せばいいというものではない。慎重に慎重につくっています。


そのほかには、たとえばDテーブル。
当時からあるDチェアという椅子がありますが、これはリビングでKチェアの横に置くイスとしてできたものです。
そのDチェアで食事がしたいという声をいただき、Dテーブルがデザインされました。
デザインにマッチするという点では、当然、塗装色も合わせてあります。

そして高峯(岐阜カリモク デザイン主任)がデザインしたダイニングセット。
ブランドは成長しますが、お客様も成長します。
結婚されて、部屋が大きくなって、Kチェアに合うダイニングセットが、どこをさがしてもないという時、これ高峰が相当苦労して作ったダイニングセットなんです。
人気があるブランドにものづくりをするのはすごくプレッシャー。
カリモク家具でだいたい1200品番数。毎年新商品がでます。
実は1200廃番になります。売れない商品です。
製造にはキャパがありますから、新しい商品を作るには売れない商品は廃番にします。
そんななかでずーっとやり続ける商品をデザインするというのはプレッシャーです。
今このダイニングの椅子は岐阜カリモクのなかでも上位にあがっています。

-高峯 だんだん、ですね。やっぱり。

あとテレビボード(ローボード)ですね。昔はないですよね、薄型の液晶テレビなんて考えられなかった。
ちなみに今年発売されたマガジンラック。これは『カリモク60』です。
実は常務が家にあった当時の現物を持ってきて、これどうだー!っていうんで、即、やります。といってできました。
あとデスク、スタッキングスツール、ちょっとドレッサー的に使うという。
世界観を保ちながらですね。キャビネットなんかも。

今日高峯が来てますので、実際デザインしたアームレスダイニングチェアⅡについて話します。
もともとカリモク60プラスとしてできた「ダイニングチェア」が非常に好評でした。
カリモク60でダイニングをとなったとき選ぶのがひとつでは、ということでアイテムとして作ろう、となりました。
もともと昔のカタログの中で、いつか復刻したいと思っていた椅子があって、当時の品番がC60というのも運命を感じて、高峯に話をして、企画会議を通しました。
図面もなかったので、もう古い現物をもとに起こして、そして岐阜カリモクから 「一応、試作ができたんですけど、、、」って電話がかかってきて。
写真では良さそうだなあという話だったんですが。

-高峯 モタレに妙にボリュームがあって、なんかもうパンみたいで。
ずっと、これ復刻したら、カリモク60のブランドに合ったものができるって思ってたんです。でも作ったら合わなかった。

無理言って、試作は手作りですから、時間かけて作ったんですが、、、
そこで新しいイスをデザインすることに。
3つ条件を出しました。座りやすい。かわいい。モタレが板。
で、高峯が描いた絵です。勝手に持って来たので高峯が怒ってますけど笑

-高峯 最初に、デザイン画を書く前に、字でコンセプトになる要素をかけるだけ書き出します。
それをなんとなくまとめています。
いすにすわってやることをだーって書いていったんです。
いすってみんな普段に使うことが多いんだなって、単純なことに気づいて、来客の時なんて言うのはほんとに少なくて、
毎日自分が使いたいときに欲しい椅子がいいんだって。
長く使えるっていうのは愛着がわくから、ということも考えて、絵を描きました。

このA案B案C案です。高峯さん、このB案とかは作らないんですか?

-高峯 いつも、コンセプトに対して3つくらいは案を考えます。残った2つを次にまわすということは、ありえない。
毎回、新しいものを考えます。

発売時期も決まっていたので、東京に持って行ってナガオカさんに見せて、即OKが出たのがA案。
そして試作を作ったら、感動するくらいデザイン画に忠実でした。
カリモクは、試作ができて、商品化する前に商品試験をします。
この椅子の場合、60kgのおもりをしばりつけて、3万回。

-高峯 一日1万回かけて、3日間。

そして電話がかかってきた。山碕さん、、ぶっこわれました。って。

-高峯 はい。2万回で。ほんとに、あと1日だったのに、デザインもつまってきていたから、ほんとに悔しくて、、

そこで脚が太いデザインのものをつくりました。そしたら、これはないよなあってのができちゃって笑

-高峯 でも一番負担のかかる部分の太さが保てれば、いいんだって気づいて、デザインが完成しました。

あと、モタレを接合するボルトにもこだわりがあってね。

-高峯 円いのが2つでるのと1つでるのとは大きく変わってくるのでデザインてそういうところだと思うんです。
せめぎ合いというところも、デザインの醍醐味といえば醍醐味なんですが、大変なところです。

とにかく、快適に座れるというのも大事なことで、カリモクは人間工学に基づいて座り心地研究というのもやってきています。
いま、、30分くらいお話しましたが、座っていただいているイス、どうでしょう。
もし、かたい板に座って、負担がかかるともぞもぞ無意識のうちに動きます。
あとですね、しんどいイスは座ると猫背になります。骨盤を回転させないことも大事。
そういった考えに基づいて、設計しています。ちょっと宣伝です笑

では最後にカリモクが考えるロングライフデザインについて。
実はカリモク60のカタログのトップには、ロングライフ「スタイル」と書いてあります。
もちろんデザインも大事ですが、長く使い続けるには、デザインだけじゃだめなんです。
長く使い続けていただくためには、耐久性がなきゃならない、まず。
あと、ずっと快適で使えなきゃならない。
特に家具は耐久消費材ですから、先ほどお話した耐久性を重視します。
ものっていうのは長く使っていただくと必ずこわれるんですね。買っていただいて、10年20年30年、やっぱりどこかこわれてきます。
その時に何が大事か。メンテナンスができることです。
カリモクはメイドインジャパンにこだわって作り続けてきまして、修理専門の職人さんを抱えています。何年使っていただこうが、ご依頼を受ければ直します。
そして、カリモク60の場合、パーツでも販売します。このことも、長くお使いいただきたいという思いからです。
パーツを販売しているのは、カリモク家具の中でも、カリモク60だけなんですね、実は。
家具はたくさんの部品で作られますから、廃番になればその部品を作る型などもなくなります。
そんな中、カリモク60は長く続けていきますという覚悟です。
ものづくりのメーカーとしては、使い続けていただく、ということを考えます。

某メーカーの方が言っていましたが、うちの家具は3年使えればいい、買い替えてくれればいいと。
それはそれでひとつの考え方ですが。
カリモクとしては創業当時から、ロングライフデザインなんて名前が出るまえから、 創業者の加藤正平が言ってたことがあります。
カリモクは木を使った木製家具メーカー。
木は天然素材。大きくなるのに100年も、場合によっては200年もかかる。
カリモクは木がないと作れません。だから、100年持つ家具を作れと。
100年持つ家具をつくれば、100年後に木がまた大きくなっていますから。

カリモクをご存じの方に、イメージを聞くと、丈夫で長持ち、と返ってきます。
やってきたことは、間違いじゃないと思っています。

以上です。
ロングライフ「スタイル」、とカリモクはあえて言っていますが、
ロングライフデザインと、プラスの考え方について、お話させていただきました。
ご清聴ありがとうございました。